Q-002 | ビルのワンフロアを複数の区画に細分化してレンタルスペースとして貸し出す場合、借地借家法が適用されず容易に明け渡しを求めることができると考えてよいでしょうか。 |
A-002 | レンタルスペースの具体的な構造として、天井に至るまでの壁やドアの鍵などが設置されているのであれば借地借家法が適用され、デスクと視界を遮る程度の高さの仕切りが設置されている程度であれば借地借家法は適用されない可能性が高いといえます。 【解説】 所有物件を貸し出す場合に、借地借家法の「建物」の賃貸借に該当するのであれば、解約の申入れや更新拒絶に正当事由が必要とされ、実際にはこの正当事由を補完するため立退料の支払いが必要となるケースが多いです。 借地借家法が適用されるとなれば、所有物件を柔軟に運用することが困難となる可能性があるため、将来的にレンタルスペースの経営を止めワンフロア全体を店舗として貸し出す可能性など、不動産賃貸業の将来的な事業計画を見据えて契約書を作成することが必要となります。 「建物」に該当するか否かについては、「建物の一部であつても、障壁その他によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するもの」は借地借家法上の「建物」であると考えられています(最高裁判所昭和42年6月2日判決・昭和41年(オ)第1426号)。 たとえば、面積3.5㎡という狭小のスペースであるとしても、四方を天井まで隙間のない障壁で囲まれ、共用スペースとは鍵付きのドアによって区画されており、ドアを開けなければ共用スペースから本件区画内部の様子をうかがうことはできない構造になっているスペースについては、本件区画は障壁その他によって他の部分と区画された独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものであるとして、借地借家法の「建物」に該当するとした裁判例があります(東京地方裁判所平成26年11月11日判決・平成26年(ワ)第10247号)。 他方で、建物部分と他の部分との境界に、若干の什器備品が置かれているのみで、壁等による物理的な境界が設置されていない構造等からして、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものではないとして、借地借家法の「建物」に該当しないとした裁判例があります(東京地方裁判所平成21年4月27日判決・平成20年(ワ)第30926号)。 そのため、レンタルスペースの具体的な構造として、天井に至るまでの壁やドアの鍵などが設置されているのであれば借地借家法が適用され、デスクと視界を遮る程度の高さの仕切りが設置されている程度であれば借地借家法は適用されない可能性が高いといえます。 |